年収の壁・支援強化パッケージについて

先月末、政府より表題のパッケージが発表されました。
まだ決定していない細かな部分もありますが纏めてみます。

目次

そもそも壁とは何か

ここでいう壁は2つあります。
俗に言う「106万円の壁」と「130万円の壁」です。
配偶者の扶養に入っている第3号被保険者は実際保険料を負担しなくても将来
給付は受けられることになっています。
その第3号被保険者の4割が就労しており、保険料の負担をしなくて済むよう就労調整している
ケースが見られます。(130万円の壁の場合は57.3%の方が就労調整)
労働力不足もあるので政府としてはこの壁を気にせず働いて欲しいということです。

①106万円の壁

これは被用者保険加入の壁です。
該当するのは、
・従業員101人以上の企業で
・週20時間以上
・年106万円(8.8万円/月)超
の方は扶養を抜け、社会保険に加入しなくてはなりません。

手当支給メニュー

保険に加入し保険料を支払うとなると手取りが減少します。
そこでその保険料負担分を企業が手当を支給し、手取額を減らさないようにする場合に助成金を
申請できます。

参考:厚生労働省 年収の壁への当面の対応策

https://www.mhlw.go.jp/content/12501000/001150695.pdf

社会保険適用促進手当」というで名目で支給すると
①1人あたり1年目 20万円 要件:賃金の15%以上分を支給すること
②2年目 20万円      要件:①と同じ+3年目以降③の取組が行われること
③3年目 30万円      要件:賃金の18%以上を増額させていること
が助成されます。
注意点は、この賃金は①②は標準報酬月額および標準賞与額、③は基本給という点です。

この「社会保険適用促進手当」は算定や月額変更の対象にはならない、となっています。

労働時間延長メニュー

労働時間の延長パターンが4つあり、それぞれ賃金増額の割合が決まっています。
1人あたりの助成額は30万円です。

手当支給と労働時間延長の併用メニューもあります。

②130万円の壁

社会保険の被扶養者の認定基準は、

年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ

  • 同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
  • 別居の場合 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満 となっています。

この年間収入は税金とは異なり、その時点から1年間の見込となります。
130万円を超えると扶養から抜けなくてはならないので就労調整をする方が多くなっています。
※今回180万円についてはまだ発表が今のところありません。
勤務先が社会保険適用事業所でなければ国民健康保険・国民年金への加入が必要となります。

対応策

一時的に130万円を超えてしまった場合は、事業主の証明により迅速に扶養認定されます。
ただし、人手不足による労働時間延⾧等に伴う一時的な収入変動である場合となります。
当初より年収130万円を超えるような条件で雇用契約している場合は社保扶養に入れない
取り扱いは変わりません。

③配偶者手当への対応

こちらは事業所ごとに異なりますが、配偶者手当支給にあたり「社会保険の扶養に入っていること」
を条件としている所が多いです。
金額も数万円になるケースもあり、保険料負担に加えこの手当がなくなることは大きな影響です。
そのため、この配偶者手当をなくそうという動きがあるようです。
ただし、これまであった手当をなくすことは労働者にとって不利益変更となりますね。
政府の方で手当の見直しのフローチャートなどを作成・公表するようです。

まとめ

まだまだ細かいことは決まっていないので今後の情報提供を待ちましょう。
助成金も条件等複雑になっていますので専門家である社会保険労務士へのご相談を
おすすめ致します。


著者のイメージ画像

伊藤 明子

大学卒業後、都市銀行本店営業部に配属。学生時代に税理士を目指していたこともあり税理士法人へ転職。育児専念期間中にファイナンシャルプランナー取得。その後別の税理士法人に勤務しながら社会保険労務士資格を取得し、2022年4月開業。