ジョブ型雇用について

日本経済新聞のトップに岸田総理のニューヨーク証券取引所でのスピーチが取り上げられていました。
その中でジョブ型雇用への移行指針もありましたので纏めてみます。

目次

ジョブ型雇用とは?

ジョブ型雇用とは、従業員に対して職務内容を明確に定義し、その職務や役割で評価する
システムです。

欧米では広く普及

欧米では、賃金が担当する職務ごとに決まる【仕事基準】となっています。
職務が変わらない限り賃金も変わらず、人事異動や昇進、昇給の概念がありません。
別の職務に就きたい場合はそれなりの基準を満たさなければなりません。
採用は必要な職務スキルを持つ人をその都度採用する「欠員補充方式」となっています。

日本では

従来の日本型雇用は「メンバーシップ型雇用」と呼ばれ、勤務地や職務を限定しないシステムと
なっており転勤や部署異動なども行われ会社に人を合わせる【会社基準】となっています。
新卒一括採用をして長期的に育成し会社を支える人材を育てて行くイメージです。

スピーチでは

人的資本を重視する社会を作るということで次のことを述べています。

  • メンバーシップに基づく年功的な仕組みを、個々の企業の実情に応じて日本に合った
    ジョブ型のシステムに見直す
  • 労働移動を円滑化し、高い賃金で高いスキル人材を集め生産性を上げる
  • 労働移動を促しながら就業者のリスキリング(職業能力の再開発・再教育)支援を強化する

ジョブ型の賃金体系

これらのことを実行するには変えていかなければならないことが諸々あります。

雇用の型が変われば賃金体系も変化します。
【仕事基準】である以上基本給1本にして、年功的な定期昇給・家族手当や住宅手当などの属人手当を
廃止とした企業もあります。
持ち家であることや子供の有無などは本人が自己選択で得たものであり、それに関連して報酬が上がったり下がったりする手当は設けるべきではないのではないか、という見解のようです。
そのような手当もこれまでは当たり前のように受け取っていましたがこれからは変わって行くかもしれません。

ジョブ型雇用によるメリット・デメリット

  • メリット
    企業側からするとその時に必要なスキルのある人材を採用できるので入社後のミスマッチが
    少なくなる
    また、自分のスキルが直接人事評価に繋がることで従業員のモチベーションも上がる

  • デメリット
    より良い条件を求めて労働移動が生じ、企業に定着しづらくなる
    社会経験のない新卒者は採用されることが難しくなる
    能力次第の評価になるので降級・降格への不安が生じる

まとめ

高い賃金を提示できるような大企業はジョブ型を採用しやすいと思います。
これに続いて中小企業も導入していくとなると、やはりその企業の実情に合わせて
一つずつ取り入れて行く方が良さそうです。
高いスキル人材に自社に定着してもらうにはどうするか。
賃金面だけでなく就労環境や社内制度を整えることも必要になりそうですね。

首相官邸「ニューヨーク証券取引所における岸田内閣総理大臣スピーチ」
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2022/0922speech.html

著者のイメージ画像

伊藤 明子

大学卒業後、都市銀行本店営業部に配属。学生時代に税理士を目指していたこともあり税理士法人へ転職。育児専念期間中にファイナンシャルプランナー取得。その後別の税理士法人に勤務しながら社会保険労務士資格を取得し、2022年4月開業。